法月綸太郎「生首に聞いてみろ」
首を切り取られた石膏像が、殺人を予告する―著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は―!?幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま、開く。
(「BOOK」データベースより)
21点
恐ろしくスピード感が無い。
「このミステリーがすごい」2005版でのNo.1と聞き、かなり期待して読んだのだが、いま一つな印象が拭えなかった。
まず主人公の魅力が薄く、人間性がぼやけている。
周囲の人物もいまひとつシャープさに欠ける印象。
そしてストーリーが二転三転する中での「もっさり感」が高く、ミステリーとしては致命的に感じた。
なにより石膏像の首が切り取られてからの展開が遅く、だれてしまった。
タイトルからは江戸川乱歩的な猟奇ものを感じたのだが、大きく外れていた。
やはり法月綸太郎は良くも悪くも"本格"なのだろう。
全ての行動に意味があり、それが結末へと収束していく。
オチも前年度の「葉桜の季節に君を想うということ」から比べると、非常に弱い。
犯行もあまりにも偶発性に頼りすぎていると感じた。