平山夢明「Sinker―沈むもの」
三件の幼女誘拐殺人が起きた。ある被害者の死体は〈並べられて〉いた。残忍な手口から、他の二件も同一犯による連続殺人の可能性が高い。キタガミ警部は事件解明のため、超能力者に協力を依頼する…。
(「MARC」データベースより)
35点
個人的には平山夢明は短編のほうがいいのではと思う。
この作品が面白くないわけではない。
ただ、ストーリーが長い分、キャラクターに感情移入してしまう。
そうすることで突き放すように淡々と描くグロテスクな描写がさらに迫ってきてしまうのだ。
また他の作品を見ているからこそ、長編の先に絶望しかないと分かって読む重さもある。
「それがいい!」と絶賛するファンもいる。
それも理解できる。
ただ長編ミステリーとしては、肝心のミステリー部分に幾分かの弱さを感じずにはいられない。
伊藤潤二も短編が面白い。
長編になると「ギョ」「うずまき」などクドさがあまりにも出てしまう。
それに近い感覚だと思う。
この作品で書かれる登場人物は、超能力者ビトー、元児童発達心理学者プゾー、ビトーの婚約者ジジ、警部のキタガミ、そして誘拐殺人犯のジグの5人が中心だ。
この内、誰に感情移入するかを作者は読者にゆだねている。
その選択しだいで結末で持つ感情も変わってくるかと思う。