乙一「The Book」
『ジョジョ』シリーズ第4部・杜王町を舞台に起こったもうひとつの事件。構想・執筆2000日以上、鬼才・乙一が渾身のノベライズ!!
(「BOOK」データベースより)
72点
ジョジョが大好きな私にとっては不安が大きかった作品。
乙一という作家はジョジョに合うとは思うが、作品にムラがあるイメージなのでそこがどう出るかと。
結論から言うと「乙一でなければ無理だった」につきる。
正直ジョジョのノベライズは非常に難しいと思った。
なんせ荒木飛呂彦のイラストあっての作品という認識が強いからだ。
だが乙一はそこをフォローしつつ、自分の色と作品の色を上手く混ぜ合わせ、違和感の無い世界観を作っている。
非常に器用な作家だと思った。
今回の作品はスタンドバトルの色より、杜王町のもつツインピークス的な不気味さを押し出している。
壁の間で暮らす女の都市伝説などは、町の持つ不気味さをうまく使ったストーリー展開だ。
当然、全く違和感が無いわけではない。
康一の独白に漫画では描かれなかった内面の吐露が加わることによる違和感など。
ただ漫画のノベライズの難しさを考えれば最低限に抑えられていると思う。
また細かい設定や漫画で回収されなかった伏線を使うなど、乙一がいかにジョジョ好きかよく分かる。
そういえば乙一はジャンプの小説賞からデビューした作家だし、そう考えるとこの出来も納得かと。
作品単体としてより、この難しい課題を見事にクリアした乙一を高く評価したい。
またジョジョファンには嬉しい事に、杜王町の地図がついていたりと装丁も素晴らしい。